息子が樹海で保護された日④
雨の中、息子のマンションへと車で出発しました。
車内は静寂につつまれ、ただ左右に動くワイパーの音だけが
”ギュッギュッ” と響いていました…
息子の部屋に入ってすぐ、気づかれぬようテーブルの上を目で確認したところ、
”遺書” のようなものはありませんでした。
しかし、いつもとは違う、スッキリときれいに整頓された部屋を見た時、
息子の覚悟を知ったような気がして恐ろしくなりました…
「本当に明日から会社に行けるの?無理せず休んでいいから」
「お父さんもお母さんも、あなたのこと大好きだからね」
「いつでも、なんでも相談にのるからね」
「嫌でなければ、心療内科に行くことも考えてみて」
「第一に ”自分の命” を大切にしてほしい」
20代の息子の頭を、まるで小さな子供の頭をなでるように優しく
手をすべらせました。
「親が帰っても、大丈夫か?」と夫が再度確認した時、
息子が小さな小さな声で「心配かけてごめんなさい・・」と
応えました。
帰宅する車の中で、息子は ”もうしない” とは一度も言わなかった
事に気づき、私の心は不安で不安でたまらないのでした・・・