息子が樹海で保護された日②
電車を乗り継ぎ、乗り継ぎ3時間以上かかって、たどり着いた
その場所に、息子はうなだれて座っていました…
息子だと確認した私達は、保護された時の様子を聞き、
警察署をあとにしました。
本当は息子の姿を見た瞬間、駆け寄って抱きしめたいと思ったけれど、
夫に「取り乱すな。太郎を責めるな」と釘をさされていたので、
こらえました。
ただ ”そっ”と息子の肩に手を置くと、私と目を合わせない息子の瞳から
涙が”スッ”と流れました。
辺りは真っ暗になり、
「息子さんを一人にしないように」と言われていた私達は
帰路の途中でホテルを見つけ、夫は息子と同じ部屋に宿泊しました。
訳もわからず、とてもこのままでは眠れないと思った私は、最初、
息子たちの部屋に行き、息子の話を聴こうとしましたが、
息子は目をそらしたまま、何を聞いても答えてはくれません。
長い長い沈黙のあと、
「持っているもの、全部捨てようと思った…」
「森に入ろうとして、歩いていたら声をかけられた…」
それだけを言って、また黙ってしまいました。
夫が「今晩は俺が付いているから」「太郎も疲れているだろうから休ませよう」
と言うので、私はホテルの自室に戻り、息子の言った言葉を何度も、何度も
思い返し考えていました・・
もし、誰かが声をかけてくれなかったら、あなたは森に入ってしまったの?
その結果どうなるか?わかっていたの? 命を捨てようとした原因は何なの?
家族に相談できない事なの?友達にも話せない事?
どうしてこんな所まで来たの?来る途中に思い留まることはできなかったの?
どうして・・・?どうして・・・?
頭の中でぐるぐると、疑問が駆け足で回ります…
途切れ途切れに2時間ほど寝たでしょうか?
気づくと朝になっていました・・・